相手が無保険(任意保険未加入)の交通事故で補償を受けるための対処法

代表弁護士 河合 利弘 (かわい としひろ)
所属 / 鹿児島県弁護士会 (登録番号42212)
保有資格 / 弁護士

事故の相手方が無保険(任意保険未加入)だった場合でも、十分な損害賠償を受ける方法は多数あります。さしあたり必要となる治療費については、被害者またはその家族が加入する保険を活用することも可能です。

決して少ないとは言えない無保険事故について、損害回復の費用を確保するための対応方法を多角的に紹介します。

【一覧】無保険事故の請求先

交通事故の請求先は任意保険だけとは限らず、補償を受けるための制度・保険は豊富にそろっています。

【一覧】無保険事故の請求先

人損事故の場合(ケガをした・被害者が死亡した)
⇒自賠責保険・健康保険・労災保険・任意保険(被害者本または家族の加入するもの)人・加害者本人への損害賠償請求

物損事故の場合(修理費を請求したい)
⇒加害者本人への損害賠償請求・任意保険(被害者本または家族の加入するもの)

「無保険」は誤解

ここで注意しておきたいのが「無保険=どの保険にも加入していない車両」という誤解です。

そもそも、国内の全ての車両は「自賠責保険」(自動車損害賠償責任保険)に加入を強制されています。無保険車両とは、任意加入の自動車保険(=任意保険)を別途契約せず、自賠責保険単体で運行しているという意味に過ぎません。

したがって、加害者さえ特定できれば、自賠責保険による最低限の補償は受けられるのです。

まずは自賠責保険に請求する

交通事故で人的被害があったときは、まず加害者の「自賠責保険」(自動車損害賠償責任保険)へ請求しましょう。被害者から直接請求を行うことで、傷害事故・後遺障害時・死亡事故について以下のような補償が受けられます。

事故の種類 補償項目 限度額
傷害事故(120万円) 治療費 実費(必要かつ妥当である限り)
看護料 ・入院1日につき4,100円

・通院1日につき2,050円

入院雑費 治療1日につき1,100円
通院交通費 実費(必要かつ妥当である限り)
診断書料 実費(必要かつ妥当である限り)
装具・器具費 原則実費(必要かつ妥当である限り)
文書料 実費(必要かつ妥当である限り)
休業損害 原則1日につき5,700円
慰謝料 1日につき4,200円(対象日数)
後遺障害時(3,000万円円) 慰謝料 等級により75万円~3,000万円
逸失利益 喪失期間・労働能力喪失率に応じて計算
死亡事故(3,000万円) 慰謝料 原則として

・被害者本人550万円

・遺族550万円~750万円

逸失利益 喪失期間・労働能力喪失率に応じて計算
葬儀費 原則60万円

注意:修理費は自賠責保険でカバーできない

自賠責保険は対人賠償(人の身体に生じた損害を補償するもの)であり、車両・眼鏡・パソコンなどの物的損害はカバーしてもらえません。

「修理費や買い替え費用を請求したい」といったケースでは、このあと紹介するように加害者本人へ損害賠償を求めます。

本人or家族の任意保険を活用する

治療費等が自賠責保険の限度を超える場合には、被害者が加入する任意保険を使うことも出来ます。契約内容により、自賠責保険ではカバーされない車両修理費や、迅速かつ納得できる解決を目指す際にかかせない弁護士費用も補償されます。

被害者本人ではなく同居家族が加入する保険が使える場合もあるため、契約書や担当者への電話で確認を取ってみましょう。

【一例】被害者側が加入する任意保険の補償内容

人身傷害補償保険…事故状況に関わりなく交通事故で治療が必要となったときに支払われる保険です。運転手だけでなく、同乗の家族・歩行中もしくは自転車に乗っていて事故に遭った家族も利用できます。

無保険車傷害保険…事故相手が任意保険に加入していない事故で、自賠責保険から支払われた損害賠償額が足りない場合の不足分を補うものです。

車両保険…車両修理費を補償する保険です。新車特約があれば、車両の損害が大きい場合に買い換えを行うことも出来ます。

弁護士費用特約…交通事故を弁護士に任せる際に必要な相談費用・着手金・報酬金などの費用を、被害者1人あたり300万円程度を限度に保険会社負担とすることのできる特約です。

治療費は健康保険or労災保険を適用できる

交通事故でさしあたり必要となる治療費については、届出により健康保険が利用できます。業務中・通勤中に事故にあったケースでは、労災保険を使って自己負担なしで治療することも可能です。

ただし、健康保険と労災保険を併用することは出来ないため、注意しましょう。

交通事故に健康保険を適用する方法

健康保険の適用には「第三者行為による傷病届」を健保組合に提出する必要があります。届け出たことは忘れずに医療機関に申し入れましょう。


【必要書類】交通事故で健康保険を適用する際の必要書類

  • 第三者行為による傷病届
  • 負傷原因報告書
  • 事故発生状況報告書
  • 損害賠償金納付確約書・念書(加害者記入)※
  • 損害賠償金納付確約書(加害者記入)※
  • 同意書

※加害者と連絡がつかない等記入させることが難しいときは、その理由を被害者が余白に書き込んで提出します。

労災保険なら治療費以外も幅広くカバーできる

労災保険を適用することで、自己負担なしで治療できる他、一時金として以下のような給付を受けられます。

【一例】労災保険の補償内容

休業補償給付…給付基礎日額の60%×休業日数分(3日の待期期間あり)

休業特別支給金…給付基礎日額の20%×休業日数

障害特別支給金…後遺障害等級に合わせて14万円~342万円

遺族補償年金(遺族年金)…遺族の数に応じて給付基礎日額153日分~245日分

遺族特別支給金…一律300万円

加害者本人に損害賠償請求する

ここまでは保険活用を前提としていましたが、どの保険でもカバーできない損害については、もちろん加害者本人に損害賠償請求することが出来ます。

弁護士に任せた方が良い理由

加害者本人への損害賠償請求は、当初から弁護士に任せるのがベストです。最終的な請求額は示談(=当事者同士の話し合い)によって決定しますが、損害額の大小に関わらずなかなかまとまらないのが実情です。

また、物損事故(人的被害がない事故)については、刑事罰を受ける可能性が少ないことから誠意ある対応を得られないケースが多発しています。弁護士を代理人として話し合いを進めることで、相手の前向きに賠償を行う姿勢を引き出し、早期解決に結び付けることができます。

政府補償事業

以上のどの方法でも十分な補償を得られないときは、被害者救済の目的で運用されている「政府補償事業」を活用することが出来ます。

注意したいのは、本制度はあくまでも最終手段という点です。他に補償を受けられる保険・制度がある場合、実際に利用していない場合でもその補償分が控除されます。

無保険事故の損害回復はお任せください

加害者が任意保険未加入だったとしても、損害回復に必要な費用を補償してもらうための制度は多種多様に存在します。

無保険事故にお困りの方は、河合総合法律事務所にご相談ください。ご相談者様の手元に残る経済的利益が最大化するよう、様々な角度から徹底検討いたします。

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