むち打ち症で後遺障害等級認定を得るためのポイント

代表弁護士 河合 利弘 (かわい としひろ)
所属 / 鹿児島県弁護士会 (登録番号42212)
保有資格 / 弁護士

頸部または腰部に現れる「むち打ち症」と呼ばれる症状は、交通事故で軽度のケガを負った人の60%以上に及びます※。これほど多いにも関わらず、適正な後遺障害等級認定を得られないケースが目立つことは否めません。

むち打ち症と診断された後に適正な等級認定を受けるには、弁護士のサポートを得ながら専門性の高い治療を継続することが大切です。

事故直後で今後現れる可能性がある症状に不安のある人・すでにむち打ち症の症状で悩んでいる人へ、等級認定基準と申請のポイントについて紹介します。

※参考:JA共済総合研究所資料

むち打ち症とは

「むち打ち症」は医学的な名称ではなく、正式には「頸椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」と診断されています。患者には頸部を中心に以下のような症状が現れ、さらに中~長期間継続する傾向があります。


【一例】むち打ち症の代表的な症状

  • 頭重感
  • めまい
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 首の後ろ側の痛み
  • 手足の痺れ

むち打ち症には様々なタイプがあり、大半を占める頸部捻挫型(頸部筋繊維や軟部組織等の損傷)・神経根症状型・バレールー型・併合型などがあり、症状の原因究明は慎重に行われています。

いずれにしても、現れる症状のほとんどは自覚的なものです。見た目で症状の程度を判別することが難しく、医師の専門性によって見解に差が生じるのが実情と言えます。

むち打ち症が該当する等級

慢性化したむち打ち症は、後遺障害等級14級9号・12級13号のいずれかに該当します。認定される等級による違いは、慰謝料・逸失利益の2項目に現れます。

裁判所基準に当てはめると、慰謝料だけで180万円・逸失利益算定のベースとなる労働能力喪失度は約3倍もの差が生じるのです。

【参考】むち打ち症が該当する等級の賠償額比較

等級 後遺障害慰謝料
(裁判所基準)
労働能力喪失度
(事故前=100)
入通院慰謝料
14級9号 110万円 5/100 実通院日数の3倍程度増額する場合あり※
12級13号 290万円 14/100

※むち打ち症で他覚所見がなく、通院が長期に及んだ場合(症状・治療内容・通院頻度を考慮)

では、14級または12級の認定切り分けはどのように行われているのでしょうか。

結論を述べると「神経学的所見・画像所見が両方とも後遺障害診断書に具備されているか」が自賠責損保の判断の分岐点となります。

14級9号

14級9号の認定基準は「局部に神経症状を残すもの」とされており、症状の程度に特別な指定はありません。分かりやすく表現を改めると「医師作成の診断書内で、患者の申告症状を医学的に説明できること」が認定基準となります。

12級13号

一方の12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」とされています。症状の程度を視覚的・客観的に立証する必要があるため、認定を得るには医学的説明だけでは足りません。

等級認定申請にあたっては、医師による「神経学的所見」と「画像所見」の両方が診断書に具備され、被害者の感じる苦痛を立体的にとらえられる資料とするのが最低条件です。

むち打ち症で等級認定を得るためのポイント

むち打ち症で等級認定を適切に受けるには、何よりも「自覚症状に沿った治療と検査をすべて実施してもらうこと」を意識しなければなりません。

受傷直後からの問診内容と治療経過が診断書に網羅されることで、症状の程度・事故との因果関係が客観的に明らかになり、等級認定基準を満たすことに繋がるからです。

ここからは、等級認定のために事故被害者が心がけたいポイントを紹介します。

医学的知見のある弁護士に相談する

交通事故後に首〜腰に違和感を覚えたときは、まず医学的知見を持つ弁護士に相談することが大切です。

交通事故の診断経験には医師ごとに個人差があり、患者とのコミュニケーションの取り方にも違いがあることは否めません。医師が患者の訴えを見逃さず対処できているか、治療プロセスに常駐してアドバイスできる法律家のサポートは必須です。

【Point】事故直後の相談が理想的です

むち打ち症の症状は遅れてやってくることも多く、事故後最大72時間後に出現する例も見られます。受傷直後に医師が症状を見逃し、等級認定時に「交通事故との因果関係がない」として非該当扱いになってしまう懸念がぬぐえません。

なるべく事故直後から弁護士に相談し、医学と法律の両面から支援を受けられるようにしておくことをおすすめします。

専門性の高い医療機関で治療を行う

むち打ち症の検査と診断の内容は、医療機関の設備にも左右されます。症状に合わせた診療科(整形外科・神経外科・神経内科など)のなかでも、交通事故の診断経験に優れた専門性の高い医療機関を選ぶべきでしょう。


【参考】むち打ち症の診断に必要な検査

  • 画像所見:レントゲン検査・MRI検査・CT検査
  • 神経学的所見:知覚検査・腱反射検査・徒手筋力テスト・椎間孔圧迫検査(ジャクソンテストやスパークリングテスト等)

指示通りに入通院を行う

医学と法律の専門的支援を受けることと同様に、医療機関の指示通りに「症状固定※」の診断が下るまで入院・通院を行うことも大切です。一定の通院日数を確保し、同じ症状について途切れなく治療を続けていることも、等級認定で重視されるポイントとなるからです。

※症状固定とは…「症状が慢性化し、医学的に承認された一般的な治療方法では改善の見通しが立たない」とされる段階です。

【Point】自己負担治療は医師の具体的指示が必須です

むち打ち症の治療を自己負担で行う場合(整骨院への通院など)は、医師からの具体的指示を必ず得ましょう。自己判断で治療を継続した場合、等級認定が得られない可能性があるからです。

むち打ち症の等級認定は当事務所にお任せください

交通事故で多発する「むち打ち症」は、自覚症状が中心となるため客観的評価が難しい性質の症例です。日常生活で実際に生じている困難の度合いを等級認定に反映させるには、医師と十分なコミュニケーションを取って必要な医学的処置を受けることが欠かせません。

むち打ち症の等級認定は河合総合法律事務所にお任せください。早期から治療プロセスに寄り添うことを重視し、依頼直後から速やかに等級獲得に必要なアドバイスを提供しています。

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