交通事故で健康保険を使うメリットと注意点
交通事故後の治療で自己負担が生じてしまう場合、健康保険が利用して大幅に治療費を抑えられることをご存知でしょうか。被害者に過失割合が生じるケースや無保険事故では、自動車保険のかわりに補償を受ける方法として検討できます。
治療費がかさむ前に知っておきたい健康保険を利用するメリットや注意点について、専門家が解説します。
交通事故の治療に健康保険は使える
健康保険の適用対象は疾病・負傷・死亡・出産であり、交通事故のように第三者による加害行為後の治療では本来利用できません。
しかし、被害者から必要な届出(“第三者行為による傷病届“)が健保組合に対して行われれば、交通事故に健康保険を利用することは構わないとされています。
【注意】業務災害・通勤災害は「労災保険」を適用する
ただし、業務中または通勤中に発生した交通事故に健康保険は使えません。
業務災害・通勤災害は事業所が加入する労災保険を利用すべきとされ、健康保険との併用は認められていないからです。
健康保険を利用するメリット
交通事故の治療に健康保険を適用するメリットは、まず医療機関で発生する治療費(診療報酬)が大幅に安くなり、その上で窓口負担分が低減される点です。
イメージを掴むため例をひとつ挙げ、健保適用前後でどのように医療コストが変わるのか紹介します。
【例】交通事故の治療で診療報酬10万点がかかった場合
・健保適用前:治療費200万円(1点=20円)⇒うち自己負担は200万円(10割負担)
・健保適用後:治療費100万円(1点=10円)⇒うち自己負担は30万円(3割負担)
健康保険の適用前は「自由診療」扱いとなり、医療機関が定める診療報酬点数の単価で治療費計算が行われます(目安は1点=20円程度)。
健康保険を適用し「保険診療」となった場合、一律で1点=10円となり、同じ診療報酬点数でも大幅に治療費が安くなります。その上で健保組合が指定割合で負担するため、最終的な窓口負担分は健保適用前に比べて大幅に安くなるのです。
健康保険を利用した方がよいケース
窓口負担分は加害者に請求することが出来ますが、必ず請求の全額を支払ってくれるとは限りません。以下のようなケースでは、積極的に保険診療とするべきでしょう。
【健康保険を利用した方が良いケース】
- 被害者に過失割合がある事故
- 治療費未払いまたは打ち切り
- 相手が無保険(任意保険未加入)だった場合
- ひき逃げ事故・盗難車両との事故
過失割合のある事故で手元に残るお金を増やせる
保険診療の恩恵を受けられるケースのなかで最も多いのは、被害者に過失割合がある事故です。窓口負担分は過失相殺により満額請求できず、治療費以外にもらうことのできる損害賠償金(休業損害や入通院慰謝料)を費消して病院に支払う必要があります。
そこで保険診療により窓口負担分を低減しておけば、加害者から支払われた損害賠償額をより多く手元に残すことが出来ます。
【例】被害者の過失割合40%の事故
・治療費=10万点(※自由診療の場合は1点=20円と仮定)
・休業補償+入通院慰謝料=100万円
①損害賠償額の合計
=(窓口負担額200万円+その他の賠償額100万円)×0.6
=180万円
②手元に残る額
=損害賠償額の合計180万円-窓口負担額200万円
=-20万円(赤字)
①損害賠償額の合計
=(窓口負担額30万円+その他の賠償額100万円)×0.6
=78万円②手元に残る額
=損害賠償額の合計78万円-窓口負担額30万円
=48万円
治療中でも健康保険に切り替えられる
自由診療から保険診療へは治療中でも可能です。治療費打ち切りもしくは未払いのトラブルに遭遇したときは、支払いの延長交渉を弁護士に任せながら、健康保険を適用して必要な費用を抑えておくことが出来ます。
健保適用の注意点
保険診療はメリットばかりではありません。利用できないケースや手続きの煩雑さについても、適用前に熟知しておくべきです。個別のケースについては、弁護士のアドバイスを受けると良いでしょう。
注意点1:受けられる治療の幅が狭くなる
先進的な治療を受けられる自由診療に対し、保険診療は治療方法や利用できる医薬品に制限があります。
自由診療と保険診療のあいだで受けられる医療の内容に差はないとする見方もありますが、一概にそうとも言えません。ケガの状態が重いほど高度医療の重要性も増すからです。
注意点2:健康保険が使えない病院もある
自由診療のほうが医療機関の報酬が増えることから、健保適用に消極的な病院もなかには存在します。万が一適用を断られてしまった場合、治療プロセスに途切れが生じないよう速やかに病院を変える必要があります。
【当事務所の特徴】医療機関の紹介はお任せください。
河合総合法律事務所では、鹿児島エリアに密着した活動を通じ、医療機関の情報を多数集積しています。通える病院が思い当たらずお困りのかたには、交通事故の診断経験に長けたお近くの病院をご紹介します。
各種保険のお得な利用方法をご案内できます
加害者から治療費が満額支払われる望みの低い事故では、健康保険を適用することで大幅な節約につながります。治療費以外にもらえる損害賠償金をより多く手元で確保できれば、日常生活への復帰に一層役立つでしょう。
河合総合法律事務所では、ご依頼者様の経済的利益をより多く確保するため、個別のケースでお得な保険活用のプランを提案しております。
初回相談無料(時間無制限)としておりますので、お気軽にご利用ください。