過失割合で示談金はどう変わるのか―弁護士がサポートできること

代表弁護士 河合 利弘 (かわい としひろ)
所属 / 鹿児島県弁護士会 (登録番号42212)
保有資格 / 弁護士

交通事故の「過失割合」は、示談成立時に受け取れる金額を数十万円~数百万円もの単位で変動させる重要な要素です。実際の事故例においては、保険会社から一方的に割合を提示され、経済・心情の両面において納得できずにいるケースが後を絶ちません。

本記事では、過失割合の重要性・交通事故専門の弁護士による支援内容について紹介します。

過失割合で示談金はこう変わる

「過失割合」は事故に対する過失全体を100%と評価し、事故当事者の過失の度合いに応じて示談金を調整するものです。被害者側の過失がわずかでも多く評価されれば、被害状況に関わらず最低10%の減額が生じるのです。

【例1】物損事故で10万円の修理費が生じたケース

・被害者0%:加害者10%…受け取れる示談金は10万円

・被害者10%:加害者90%…受け取れる示談金は9万円

人損のみ過失割合が高く評価されることがある

問題となるのは、物損・人損で別々に過失割合を評価できる点です。

人損に対する賠償項目(慰謝料・治療費・逸失利益・休業補償など)は高額化しやすいことから、加害者側から「物損よりも人損の過失割合を高く見積もる」という提案がなされる場合があるのです。

【例2】物損で30万円・人損で500万円の被害が生じたケース

⇒示談交渉相手の保険会社から「物損は0%:100%・人損は10%:90%で評価する」と提案があった場合

示談金の総額…530万円

受け取れる示談金…480万円(物損30万円・人損450万円)

差額…50万円

10%とはいえ、本例のように金額に大差がつくことは否めません。過失割合が争点化しやすい重大事故・死亡事故(示談金の総額が数千万円以上に及ぶもの)では、割合に応じて100万円単位もの差が生じます。

不当評価があれば、ただ事故状況を知る者として納得できないばかりか、経済的にも著しい不利益を被ることになるでしょう。

過失割合はどう決められているのか

過失割合には判例に基づく目安があり、事故状況ごとに細かく整理されて類型化されています。実務では保険会社・弁護士ともに、左記目安をとりまとめた書籍『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』を用いて判断しています。

同書籍より一部引用して、実際に過失割合がどのように決められるのか紹介します。

【車対車の事故例①】交差点での出会いがしら衝突

※当事者=車両A・車両B

・Aが青信号・Bが赤信号の場合…A:0%・B:100%

・Aが青信号・Bが黄信号の場合…A:20%・B:80%

・A・Bともに赤信号だった場合…A:50%・B:50%

【車対車の事故例②】割り込み・進路変更事故

※当事者=直進車A・割り込みまたは侵入車B

・Bが追い越し車線から走行車線へと変更した場合…A:30%・B:70%

・Bが走行車線から追い越し車線へと変更した場合…A:20%・B:80%

【歩行者対車の事故例】信号機が設置されている横断歩道で発生

※当事者=歩行者A・車両B

・Aが青信号で横断開始した場合…A:0%・B;100%

・Aが黄信号で横断開始・車が青信号で侵入して黄色信号で右左折した場合…A:30%・B:70%

過失割合で弁護士にできること

過失割合に是正したい要素があっても、自力で相手方に主張を認めさせるのは困難です。割合の判断は本来裁判所が行うべきものですが(民法第722条2項)、実際には事故当事者間の協議で決められるのが通例です。

加えて、話し合いのテーブルに着くのは加害者本人ではなく、保険会社の示談担当者になることがほとんどです。対応に手慣れた保険会社と対等に協議するには、是正要素の法的根拠を説明できるのが最低条件です。類似の交通事故ケースに通じ、判例知識を深めた弁護士の力は欠かせません。

判例に基づいた割合を見極められる

先に紹介した例だけでなく、保険会社・弁護士が用いる目安には多種多様な事故例が網羅されています。交通事故に長けた弁護士であれば、刑事記録を多数の類似判例に当てはめ、相手方の提示する過失割合の是正要素を見極められます。

「修正要素」を指摘できる

過失割合は完全にパターン化されているわけではなく、当事者の状況や現場ごとの「修正要素」(割合を加算または減算できる要素)が加味されます。

提示された過失割合に「依頼人側の減算要素」または「加害者側の加算要素」が考慮されていない場合には、弁護士から立証を含めて修正を主張することが出来ます。


【参考:過失割合の減算要素(一例)】

減算要素 概要
車両の著しい過失 (相手方の)居眠り運転・酒酔い運転・無免許運転・あおり運転・時速30キロ以上の速度違反など
車両の重過失 (相手方の)脇見運転・酒気帯び運転・著しい操作ミス・時速15キロ以上の速度違反など
被害者の年齢 6歳未満の用事・13歳未満の児童・65歳以上の老人
集団横断 集団登校など、まとまった人数で横断していたため車が十分注意できた状況
歩車道の区別なし 歩道と車道の区別がなく、車両にとって走行に注意を要する道
車対車の事故 (相手方の)著しい過失・重過失・直近右折・大回り右折・早回り右折・既右折・進入禁止違反など
対バイクの事故 (相手方の)著しい過失・重過失・ヘルメットの装着違反・操作ミスなど

過失割合に納得できないときはご相談下さい

河合総合法律事務所で取り扱った交通事故ケースにも、過失割合に是正要素が見つかり示談金を大幅修正した例があります。

ご主張があるときこそ、専門家による代弁・立証が必要です。保険会社から提示された割合に納得できないときは、当事務所に確認をお任せください。網羅的に集積した類似案件をもとに的確なアドバイスを行います。

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