複数箇所または重い後遺障害が残ったときはどうなる?等級認定の「併合」「相当」「加重」とは

代表弁護士 河合 利弘 (かわい としひろ)
所属 / 鹿児島県弁護士会 (登録番号42212)
保有資格 / 弁護士

「交通事故で全身に複数の障害が残った」「以前からあった症状が重くなった」といったケースでは、上位の等級認定を得て損害賠償額を増額することが出来ます。

治療後に日常生活に不便が生じる見込みが高いときこそ、こうした等級認定の判断基準は基礎知識として有用なものでしょう。

本記事では、後遺障害等級認定の併合・相当・加重の基本的な考え方について解説します。

併合・相当・加重の判断が行われるケースとは

後遺障害の等級認定基準は「ある特定の部位に残った症状」に着目して作成されています。ここで生じるのが、基準表にない障害が残るケース・全身に分散して障害が残るケースの取り扱いに関する問題です。

このように例外的判断が必要な後遺障害については、併合・加重・相当の3つの原則に基づいて等級認定が行われます。

【併合・加重・相当】認定対象となるケース

併合:複数の後遺障害が残った例

加重:事故発生前に既に障害があった例

相当:自賠法施行令別表第一及び第二に定めのない後遺障害が残った例

判断基準となる「障害系列」とは

併合・加重・相当の判断では、障害の客観的な部位だけではなく、解剖学的に全身を35部位に分けた「障害系列」のどれにあたるかが重視されます。

各判断基準の解説を行う前に、参考として障害系列をまとめた表を紹介します。


【『労災補償障害認定必携』より引用】

部位 器質的障害 機能的障害 系列
眼球(両眼) 視力障害
調節機能障害
運動障害
視野障害
1
2
3
4
まぶた 欠損障害 運動障害 5
欠損障害 運動障害 6
内耳等(両耳) 聴力障害 7
耳かく(耳介) 欠損障害 8
欠損障害 9
欠損及び機能障害 10
そしゃく及び言語機能障害 11
歯牙障害 12
神経系統の機能または精神 神経系統の機能又は精神の障害 13
頭部、顔面、頚部 醜状障害 14
胸腹部臓器(外生殖器を含む) 胸腹部臓器の障害 15
体幹 せき柱 変形障害 運動障害 16
その他の体幹骨 変形障害
(鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨)
17
上肢 上肢 欠損障害 機能障害 18
変形障害(上腕骨又は前腕骨) 19
醜状障害 20
欠損障害 機能障害 21
変形障害(上腕骨又は前腕骨) 22
醜状障害 23
手指 欠損障害 機能障害 24
欠損障害 機能障害 25
下肢 下肢 欠損障害 機能障害 26
変形障害(大腿骨又は下腿骨) 27
短縮障害 28
醜状障害 29
欠損障害 機能障害 30
変形障害(大腿骨又は下腿骨) 31
短縮障害 32
醜状障害 33
足指 欠損障害 機能障害 34
欠損障害 機能障害 35

「併合」の規則

全身に複数の後遺障害が残ったときは、障害系列ごとにまず等級認定を行い、障害の中で最も重いものに着目して繰り上げ認定を行います。


【併合認定の基本ルール】

  • 14級の後遺障害が複数ある場合:14級
  • 13級以上の後遺障害が2つ以上:重い症状の等級を1つ繰り上げて認定
  • 8級以上の後遺障害が2つ以上:重い症状の等級を2つ繰り上げて認定
  • 5級以上の後遺障害が2つ以上:重い症状の等級を3つ繰り上げて認定

ただし、併合認定には以下3つの例外認定も存在します。

例外1:みなし系列

系列の異なる障害であっても、同じ部位ととらえることの出来る障害は同系列とみなし、まとめて等級認定を行います。


【同一系列とみなして等級認定される障害】

  • 両眼球の視力障害・調節機能障害・運動障害・視野障害の各相互間
  • 同一上肢の機能障害と手指の欠損または機能障害
  • 同一下肢の機能障害と足指の欠損または機能障害

例外2:組み合わせ等級

系列とともに部位も明確に異なる障害も、例外的に同系列として組み合わせ、まとめて等級認定を行います。


【組み合わせて等級認定される障害】

  • 両上肢の欠損または機能障害
  • 両手指の欠損または機能障害
  • 両下肢の欠損または機能障害
  • 両足指の欠損または機能障害
  • 両まぶたの欠損または機能障害

例外3:併合の対象外もしくは等級引き下げが行われるもの

下記の障害については、併合認定による等級繰り上げの対象外となるか、繰り上げ後に引き下げが行われます。

【併合の例外ケース】
同一の障害を複数の視点で評価しているか、特定の後遺障害が他の障害へと派生するのが通常の場合⇨併合せず、評価された障害のどちらかが該当する等級を認定。
併合することで障害の序列を乱すもの(併合後の等級認定基準よりも実状が軽いとみなされるケース)⇨併合した上で、等級を引き下げて認定

「相当」の規則

後遺障害等級表に記載のない後遺障害については、下記①もしくは②に該当するものをその程度に応じて各等級に相当するとみなして認定が行われます。


【相当認定の対象となる障害】

  1. 後遺障害等級表のどの系列に属さないもの
  2. 等級表の系列には後遺障害が存在しているが、該当する障害がないもの

例として、嗅覚喪失・味覚脱失・外傷性散瞳が挙げられます。

「加重」の規則

「加重」は併合・相当とは異なり、交通事故により新たに生じた後遺障害を等級認定した上で、事故前から存在した障害に相当する慰謝料・逸失利益を控除する認定方法です。

【例】事故前に「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号・慰謝料290万円)が認定されており、事故発生後に「脊柱に変形を残すもの」(11級7号・慰謝料331万円)の認定が受けられる状態になった場合
⇒後遺障害慰謝料=331万円-290万円=41万円

加重認定の対象となる障害

加重認定の対象となる「事故前からあった後遺障害」は、交通事故以外の理由で生じたものも対象となります。

また、部位・系列のいずれか(もしくはどちらも)異なるものであっても、加重と判断され賠償額が控除されます。

併合・相当・加重の認定は弁護士に相談を

併合・相当・加重の認定は交通事故の賠償額に直結し、保険会社とのあいだで争点化しやすいポイントです。

医師に何気なく伝えた事故前の健康状態をとらえて「加重による控除」を主張されたり、複数の障害が連動して日常生活に重大な影響をもたらしているのにも関わらず「併合の対象外」を主張されたりする可能性は否めません。

障害の実状を示談金に反映させるために、専門性の高い医師・医学的知見を持つ交通事故専門の弁護士の両方のサポートを得ることをおすすめします。

医学・法律の両面からバックアップを受けることで、治療計画を適切に構築して「被害者自身が主観的に感じる苦しみ」を等級認定に反映させることが出来ます。

適正な等級認定は当事務所にお任せください

河合総合法律事務所では、後遺障害等級(1級~14級)の各基準に加え、例外的に等級繰り上げ判定が行われる症例についても網羅的に知識を有しています。

当事務所では「ご依頼者様の健康状態を医師に任せきりにしない」をモットーにしています。診断書のチェック・弁護士から被害者への医学的アドバイスを緻密に行い、適正な等級認定を実現させます。

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